
1-0成長
【崩技】【玉響】【玉響】【玉響】【玉響】【玉響】【玉響】【影討】【怒濤】
探偵、助手登場。
塔上、探偵は望遠鏡を覗き込み、助手はその傍でにやにや笑っている。
[助手] それで、どうなんだ。見つかったのか。まさか、一人で楽しんでる訳ではあるまいね。
[探偵] ふふ。まあ、待ちたまえよ。今探しているところさ。
[助手] 待ち遠しいな。
[探偵] おや。
沈黙が流れる。
[助手] ……どうした。
[探偵] なんだ、……彼女らは笑っているのか?
[助手] 作り笑いでは無く?
[探偵] ばかな!
[助手] 我々は十分に舞台を歩き回った。火種も間違い無く仕掛けた筈だ。
探偵が望遠鏡から目を離して助手に合図する。
助手は望遠鏡を覗き込む。
[探偵] 話が違う。
[助手] 興ざめだ!
探偵は腕を組んで歩き回る。
[探偵] 仕掛けが動かなかったのか? ──あり得ない! 我々は騙されたのか、裏切られたのか?
それとも──、パノラマの怪人か?
助手が探偵に振り向く。
[助手] よせ。
[探偵] 怪盗少年の結末は? 違い無く『トラ』だった! そうとも、我々にぬかりは無い。だから、彼の美術室は完成しなかった筈だ。
[助手] あれは間違い無く悲劇だった!
[探偵] だが、我々の筋書きに何者かの介入があったとしたら? 我々の目を逃れ、彼を手伝うものがあったとしたら? あの事件には不自然な点があまりにも多過ぎる。
[助手] もういい。やめろ!
[探偵] 彼の言葉が嘘では無く、美術室が本当に完成していたとしたら? 彼がもし幸福な眠りでその頁を終えたとしたら?
──煩い、黙れ!──黙れ!
探偵が望遠鏡を蹴飛ばす。望遠鏡が壊れ、筒が床に打ちつけられる。
[探偵] もはやお前は場を去った人間だ。消え失せろ、亡霊め!
幕が下っておしまいだ、蝋燭は消えておしまいだ! 遊びはもう終わったんだ!
やめろ、そんな目で私を見るな。私は悲劇役者なんだ! くそ、逃げるぞ助手君。我々に喜劇などあってはならない。
急いで荷物をまとめたまえ、街を出るぞ。もういい! たくさんだ!
階段へ消える探偵。 後を追う助手。
探偵、助手退場。
eika
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