
1-0成長
【無想】【待伏】【交錯】【雷火】【+盾】【封印】【怒涛】【+硬】【玉響】
「お若いの、どうじゃ…ちゃんと明確化(クリア)できたか?」
「はい、ヴィジョン・クエストを潜り抜け、確かに女王の心をお連れしました」
回りのそんな声を聞きながらアリスは目を覚ました。幾つもの顔が自分を取り囲んでいる。
約半数が精霊からなる、アリスに仕えた臣下たちだ。中には涙を目に浮かべている者もいるが、
これは涙の精霊石なので常態だ。
体を起こすと周囲の者が一斉に臣下の礼をとった。あんまり臣下の礼をとっているようには
見えない者もいるが、普段は礫片を振り巻いている黄の精霊石も、宙に漂うのをやめ、岩体をぴっしりと固めている。
「状況の説明を」
アリスの言葉に、1人の家臣が面を上げた。姿も声も違うが、それが夢の中にやってきた彼であることは魂の形でわかった。
100万と1/2回生きたねこの国からやってきた流れ者の一団、ダラン兵の剣士だ。
「はっ、魔王ノナの軍勢により適当伯領は壊滅。我らはデクスターに使者を送り、魔王ノナとの戦いの間の軍事協定を
結びましたが、デクスターの赤盾めはこれを反故にし、ジニスターへ侵攻。前後から攻められて我が軍は四散、
敗走の途中で魔王の配下、邪僧ョヌヂによって女王は夢の中に封印され、辛うじて御身だけは救い出したものの、
我が国は完全に崩壊。今や、ジニスター臣民と呼べるものは、陛下の入民後に仲間になった者も含め、
ここにいる僅か十五名となってしまいました」
エスカッション塔でジュリエットの幽霊を見てからの記憶がない。その前後に封印されたのだろう。
辺りを見回せば、ここも廃墟のようだ。長い間、隠れ潜んできたのに違いない。
「そうか。長らく苦労をかけたな」
言いながら、こんな口調ではなかったな、と思い出す。夢の中での調子がまだ抜けていない。
「長きに渡り孤独な戦いを続けた陛下のご苦労には及びません」
「その苦労もようやく報われるってもんだ」
黄の精霊石が、岩体をごりごり言わせながら喋る。声は小さくないが、岩の摩擦音を伴うため
慣れていない者にはきわめて聞き取りづらい。
「これでジニスターの再建がなる」
「だが、私ひとり目覚めて何になろうか」
アリスの言葉に、緑の精霊が答える。
「女王なくして我々臣下が何になりましょう。いかに研ぎ澄まされた剣も、操る腕なくては戦うことは出来ません。
我ら懐剣十五振り、女王の手に握られる日を待ちわびてきました」
失言であった。それだけの想いがあったればこそ、長い年月を自分の復活に捧げてきたのだ。
向こう側の壁に、玉座がある。
「敗走の時に、あれだけ磐の精霊柱が持ってきてくれたんだよ」
若者のように元気だった神官アンジェラが、すっかり年老いている。
精霊たちは歳が外見に現れにくいし、ダラン兵の老若はアリスには見分けづらいので気づかなかったが、かなりの年月が流れているようだ。
月日は失われたが、取り戻さなくてはならないものがある。私はただ十五人しかいない国民の期待に応えなくてはならない。
アリスはベッドから足を出し、衰弱した体で立ち上がった。
臣下を身振りでどかし、玉座へとゆっくり進む。
途中でよろめいたその体を、黒騎士レムスが慌てて駆け寄って支えた。
後ろを振り返れば、永の寝床だったベッドがある。
錯綜し分裂する夢の中で、あのベッドは何度も出てきた。
作家の母に育てられる病弱な父なし子の私は、いつもあのベッドに横たわっていた。
レムスに支えられながらそのベッドを見ている内に、ふと浮かんだ言葉があった。
目覚めてから急速に夢の記憶が剥がれ落ちていく中に、僅かな残滓として消え残っている情景だ。
それはアリスが見た夢の中にしか存在しない物語で、言葉にしたところで誰にも通じることはない。
それであっても、それを口にしたということをこの世界に刻むことに意味を感じて、アリスは口を開いた。
「離してくれ、1人で行ける。夢から醒めたアリスは、1人で歩かねばならないものだ」
誰もその言葉の背後に隠された含蓄は理解しなかったが、言葉通りの意味に現れた決意だけは感じ取った。
(続きはs_senさんが描きます)
(本人の許可は取っていません)
望むのなら、末尾に以下の文章を追加する。
DDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD
アリスは、何かを握りしめて寝ていたようです。
それは、夕暮れ色をしたきれいな石でした。
『夕の精霊石』。アリスはそう名づけました。
「夢の力。半分は制御できた。でも、もう半分は…」
アリスは誰かに話しかけるように、つぶやきました。
しばらくすると、お母さんが帰って来ました。
お母さんは起き上がったアリスの姿を見るなり、
尻もちをついてとても驚いてしまいました。
「お母さん、ペンと紙をちょうだい。
どうしても書かなければいけないことがあって」
アリスは大量のお話を書き上げました。
上手いか下手かはともかく。
つづく?
niv
http://stara.mydns.jp/unit.php?vote=true&id=3891,4782,